カテゴリ:用語の説明( 6 )

「ウミウシ」とは

そもそもウミウシとはなんでしょうか。
いまやダイバーでウミウシを知らない人はいないと思います。たぶん誰でもウミウシと言われれば思い出せる種類のひとつやふたつ、あるのではないかと思います。

伊豆で代表的なウミウシと言えば、たとえばアオウミウシでしょうか。
b0156853_19255614.jpg


その定義を、PDFウミウシ図鑑「日本のウミウシ」より転載します。

「ウミウシ(後䚡類)は成体の殻が退縮/消失する傾向を持つ、巻き貝(腹足類)の多様な一群である。鰓が心臓の後方に位置することから後䚡類と呼ばれる。多くが体長1-3cm程度であるが、中には体長が50cmを越える種もある。数種を除いて全て海産である」

平たく言えば「貝殻の無い貝の仲間」と言ったところでしょうか。

ちなみに上記の定義を引用した「日本のウミウシ」図鑑は2012年12月にリリースされました。ウミウシに関する図鑑の中ではもっとも新しいと言えます。また従来の紙の図鑑ではなく、電子書籍版の形を取っているので、新しい知見が反映される速度も早い、とのことです。

興味のある方は下記のリンクからどうぞ。

「日々是匍匐 (図鑑の執筆者中野理枝さんのブログ) 」

この図鑑に載っているウミウシ(後䚡類)の分類表を下記に転記します。

軟体動物門
 腹足綱
  直腹足亜綱
   異鰓上目
    異旋目(下位異鰓目)
    有肺目
    後䚡目
     スナウミウシ亜目
     頭楯亜目
     アメフラシ亜目(無楯亜目)
     ニセイワヅタブドウガイ亜目
     嚢舌亜目
     裸殻翼足亜目
     有殻翼足亜目
     傘殻亜目
     側鰓亜目
     裸鰓亜目
      ドーリス上科
        顕䚡ウミウシ類
        隠鰓ウミウシ類
        孔口ウミウシ類
      タテジマウミウシ上科
      スギノハウミウシ上科
      ミノウミウシ上科

※ 赤字はウミウシではない

(引用終わり)

上記の「日本のウミウシ」図鑑「はじめに」によると、ウミウシの分類はDNAの塩基配列に基づく分類方法が導入されるようになって、従来の形態重視の分類方法が大幅に見直されたそうです。
その分子系統解析による分類体系を反映させた初めての日本語のウミウシ図鑑が上記の「日本のウミウシ」図鑑ということになります。

当ブログでも新しく登録されるウミウシはもちろん、過去の登録も折を見て少しずつこの「日本のウミウシ」図鑑の内容に即していく予定です。
ただガイドがひとりでこつこつとやっているブログですので、なかなか行き届かない点もあると思います。その辺はどうかご容赦いただいた上でご覧下さいね。
[PR]
by idive-marinelife | 2014-01-12 20:04 | 用語の説明

学名と標準和名

【学名】

学名とは、生物につけられた世界的に共通の名称のことです。
基本的にひとつの生物には、ひとつの学名しかありません。そして学名はラテン語で表記されています。

何故ラテン語が使われているかというと、死語である為に文法などの面で変化が起きないこと、ひとつの近代語の立場に偏らずに中立的でいられること、伝統的に権威のある言葉であり世界的に高い地位を有する言葉であること、学術用の語彙が整備されていることなどが理由とされています。

学名はその生物の名前を「属名」と「種小名」で表します。これは日本人の姓名の名字と名前と考えると分かりやすいですね。属名が名字に当たります。

たとえば、ヒトの学名は有名な「Homo sapiens Linnaeus, 1758」です。この場合「Homo」が属名ですね。ラテン語でホモ・サピエンスは「知恵のある人」という意味だそうです。
b0156853_19104678.gif


また、斜字体で書かれた「Homo sapiens」の後ろの「Linnaeus, 1758」の部分は、リンネという人が1758年に命名した、ということを表しています。

学名には幾つかルールがあります。上記のように属名と種小名で構成される二名法で表すこともそうですし、ラテン語を使うこと、斜字体で表すのもそうです。また属名の最初の一文字は大文字で表し、種小名の最初の一文字は小文字で、というのもそうです。

学名を斜字体(イタリック体)で表す理由としては、文章中において、他の語句と明確に区別しておく必要がある、というのがその理由のようです。

ひとつの生物にひとつの学名、は当たり前のことのようですが、意外にそうでもありません。
もちろん混乱を避ける為、ひとつの種に対し有効な学名はひとつだけ、というのが大原則ですが、種によっては誤って複数回記載されていたり、記載後の分類の変更によって名前が変わったり、ということもままあるようです。

いずれにしろ、一種類の種に対し複数の名前があるのは混乱の元となります。誤って複数回記載されていたような場合、基本的には早い者勝ちの原則で、一番最初に提唱された学名が有効とされています。

【標準和名】

学名とは別に、日本にはその生物に対して日本語の名前(=標準和名)もあります。これは当然日本人もしくは日本語を使う人の間でしか通用しないローカルネームです。

ですが一般的にはこの標準和名のほうが広く流布しているし、親しまれていますよね。
魚のマダイの学名は「Pagrus major」ですが、日本人でマダイを「パグルス・マイヨル」と呼ぶ人はまずいないと思います。f ^ ^ *)

ところで学名はすべての生き物につけられているかと言うと、実はそうでもありません。地球上にはまだ未記載の生物がたくさんいます。

こうした、存在は知られているが未だ学名はつけられていない生き物の場合、科学的にどう表記しているのでしょうか。たとえばその生物の属まで分かっている場合は属名のあとに「sp.」という記号をつけて表します。これは「エスピー」と読むそうです。

雲見で時々見かけるウミウシのひとつにオセロウミウシがいます。しかしこのウミウシには学名がついておらず、「本州のウミウシ」図鑑では「DORIDIDAE sp.4」と紹介されています。しかしこの「sp.4」の4という数字はあくまでもこの図鑑の中の通し番号でしかありません。他の図鑑ではまた別の番号が割り振られている可能性もあります。

またオセロウミウシという名前も、正式に提唱された標準和名ではなく、あくまでもダイバーの間でのみ通用する仮称です。しかしこの通称があるが故にこのウミウシのことをきちんと認識できる、という側面は見逃せません。

このように、名前がないとその生物を記録することも出来ませんし、他の種と比べることも出来ません。
その種を他の生物ときちんと区別して認識する、という点において、学名とは違う標準和名にも、その価値は大きいものがあります。

【参考としたサイト】
「学名 - Wikipedia」
「ラテン語 - Wikipedia」
[PR]
by idive-marinelife | 2001-02-21 18:47 | 用語の説明

生物の分類

生物の分類は、「分類学」と呼ばれ、その生物の形態や生化学、遺伝子レベルでの差異から他種と区別し、世界共通の学名をつけることを目的とした生物学の一分野です。

具体的には、生き物が多種多様な地球上の生物のどのグループに属するかを明らかにし、そのグループ同士の類縁関係や進化の系譜を解き明かし、さらにこの分類を階層的に体系付けしようとすることです。

生物の分類に関して、最初に承知しておかなければならないことは、今なお二重の意味でダイナミックに変化している、ということです。

二重の意味の変化、そのひとつ目は何かというと、ひとつの生物に関する分類も(その生物によっては)日々変化しているということです。我々素人からすると、生物の分類はある程度解き明かされて、この生物はこの種類、というように固定化されている、と考えがちです。

しかし、その生物の種類にもよりますが、分類手法の進化とともに新たな知見が次々に加わり、日々変化していると言っても過言ではないくらい流動的なものだと言うことです。

さらには、ある生物の分類の仕方について、研究者の間で見解が違うことなど、ザラにある、ということです。つまりある人はこの分類だと言い、別の研究者はいやこちらのグループに含まれる、と言っているってわけですね。

また最初に「二重の意味で」と言ったふたつ目の理由は、分類の枠組みそのものも変化していると言うことです。

近代における分類学の父と言われたリンネは、最初に生物を大きく「動物界」と「植物界」のふたつに分けました。これは2界説と呼ばれましたが、これに原生生物界が加わって3界説になったり、5界説になったりしました。さらに、いちばん上の分類項目と考えられてきた「界」の上にさらに「ドメイン」という項目が増えたりと、まさに未だ発展している途上の学問と言えます。

とは言え、その分類を知ることは決して無駄なことではありません。
特に種のひとつ上の項目「属」には、その種に近しい生物が集められています。この「属」に含まれる「種」に共通する特徴を知ることで、新しい生き物に出会った時、この生き物はこの属に含まれる生物の仲間ではないか、といったことが分かるようになります。

次に、生物の分類に関して、ごく基本的な情報を載せておきます。

生物は基本的に「ドメイン」「界」「門」「綱」「目」「科」「属」「種」という順序で、より大きな階層から小さな階層へと分けられています。
最後の「種」が、生物分類上の基本単位であり、その生物そのものを意味します。
そのひとつ上の「属」は、ある程度似た系統の種を集めたグループ、という認識でいいと思います。

ヒトを例にとってみましょう。

真核生物ドメイン・動物界・脊索動物門・哺乳綱・サル目(霊長目)・ヒト科・ヒト属・ヒト

ヒト属に含まれるのは現在では我々ホモ・サピエンスのみで、その他の種はホモ・ネアンデルターレンシスを最後に絶滅しているとされています。

魚のマダイだとこうです。

真核生物ドメイン・動物界・脊索動物門・条鰭綱・スズキ目・タイ科・マダイ属・マダイ

となります。

ダイビング中に見る生き物の分類なんて知らなくても、生き物観察は充分楽しめます。ですがある生物について深く理解したいと思った時には、この生物の戸籍とも言える分類を知ることは大いに役に立ちます。

また全生物には、世界共通でその生き物に固有の「学名」がつけられています。この学名に関しては、こちらの記事を参照して下さい。

【参考としたサイト】
「分類学 - Wikipedia」
「生物の分類 - Wikipedia」
「属_(分類学) - Wikipedia」
[PR]
by idive-marinelife | 2001-02-20 22:15 | 用語の説明

植物と動物の違い

海の中って、一見して「はい、これは植物」「これは動物」と言えない、あいまいで、不可思議な生き物がたくさんいます。

でも、もちろんどっちかには分けられるわけで。

・・・と書いておきながら、いきなり反対のことを言うようですが、この広い世界には植物にも動物にも分けられないものもいます。その事について、ここでは論議しませんが、興味のある方はこちらのリンク(Wikipedia:「生物の分類」)などをご覧になって下さい。

さて、本題に戻ります。普通、ダイバーが目にする水中の生き物というのは、やっぱり大きく「植物」か「動物」に分けられる、と考えて差し支えないと思います。

で、どっちかに分けようとした時のざっくりとした定義は、こんな感じになると思います。

1)植物は光合成を必ずする。動物は光合成をしない。

2)独立栄養であるか、従属栄養であるか。
光合成をして自らエネルギーを生産し、そのエネルギーで生きていける。つまり独立栄養であるのが植物。他の生き物を食べることでしか命を長らえることの出来ない従属栄養であるのが動物。

3)盛んに動き回るかどうか。
動き回らないのが植物。(そのため独立栄養で生きていける)
動き回るのが動物。(そうやって他の生き物を摂取するため従属栄養である)

(参照:Yahoo知恵袋『動物と植物の境界・定義・違い』

もちろん、他にもあるのでしょうが、分かりやすい項目は上記のような感じになると思います。これを踏まえて。

幾つか例を挙げながら見ていきましょう。
b0156853_11595141.jpg


上の写真はソフトコーラルの一種でオオトゲトサカです。これを上の定義に従って見ていくと、まず1)の光合成をするかしないか、で言えば、しません。なので動物。

2)の独立栄養か否かは、これがちょっと難しいのですが、オオトゲトサカ自体は光合成をしません。そしてポリプの触手でプランクトンなどを補食して食べます。なので動物。

ただその体内に共生している褐虫藻と呼ばれる微生物が光合成をしています。そして宿主であるトゲトサカに光合成で得られたエネルギーを、言わば家賃代わりに提供しています。
つまり自身は従属栄養ですが、独立栄養の褐虫藻と共生することで、どっちも出来るってことですね。

3)の盛んに動き回るか否か、は固着しているので動き回りません。ここだけ見ると植物のようなので、混乱する原因となっているようです。

では次のウミカラマツはどうでしょうか。名前の通り、松のような枝ぶりですね。
b0156853_1159487.jpg


定義1)光合成はしません。なので動物。

定義2)独立栄養か否か。刺胞動物の仲間ですから、小さなポリプでプランクトンなどを補食して食べているはずです。つまり従属栄養ですね。

これ以外に、例えばオオトゲトサカのように共生している微生物がいるかどうかですが・・・。私が手元にある図鑑などを調べた限り、本種に褐虫藻などの微生物が共生している、との記述は見つけられませんでした。

定義3)やっぱり岩壁に固着して動きません。それとこのいかにも松っぽい見た目がくせ者で、一見して植物かな?と思わせます。でも結論は、動物です。

それじゃ、次のシマウミシダはどうでしょう。
b0156853_120179.jpg


結論から言えば、これも動物です。でも岩場にふさふさと生えている様は、いかにも植物っぽい感じですよね。
1)光合成はしません。

2)羽根のように見える腕に引っかかったプランクトンを食べています。従属栄養ですね。

3)意外に自由に動き回ることが出来ます。腕をひらひらと動かして遊泳することも出来ます。

はい、いかがでしょう。少しは参考にしていただけたでしょうか。(*^^*)

この項目では動物と植物の違いをテーマにしましたが、もう少し広く生物の分類について、知りたい方は、こちらも参照して下さい。
[PR]
by idive-marinelife | 2001-02-14 11:43 | 用語の説明

スルー系

アイダイブ的ダイビング用語。

普通に見かける、見た目が地味、などの理由でガイド中に素通り(スルー「through」)されてしまう生き物のこと。
代表的な例はコロダイ、かな? f ^ ^ *)
[PR]
by idive-marinelife | 2001-02-06 11:48 | 用語の説明

季節来遊魚(きせつらいゆうぎょ)

季節来遊魚とは、毎年初夏から秋にかけて、主に伊豆半島などの温帯域に黒潮に乗って漂着した熱帯・亜熱帯の魚のことを指します。本来はもっと南部の地域に生息する回遊性を持たない魚たちで、水温の低下とともに姿を消していくので「死滅」という言葉で表されていました。

上記にもあるように、以前は「死滅回遊魚(しめつかいゆうぎょ)」とも言われていました。同じ事ですね。ただ、語感がよくないので徐々にこちらの言葉「季節来遊魚」に置き換わりつつあるように感じます。

その理由としては、そもそも回遊ではないこと(本来の分布域に戻る能力がない)、またサケなどのように産卵後死滅する回遊魚と紛らわしいことなどがあげられます。

この「季節来遊魚・死滅回遊魚」は生態学的に正しい用語ではなく、ダイバーの間で通用する便宜的用語です。「無効分散」とも呼びます。これは繁殖に寄与しない分散という意味です。

一見すると無駄死にのようですが、環境の変化とともに、今まで生息できなかった地域で生息できるようになる可能性があり、まったくの無駄というわけでもありません。

逆に、漂着先で子孫を安定的に残すことが出来れば、それはもう「死滅回遊魚・季節来遊魚・無効分散」ではない、ということでしょうね。

伊豆の季節来遊魚は、主に紀伊半島や四国の魚たちのタマゴや稚魚が、流れ藻(主にホンダワラ類)に乗って漂着した時に出現するようです。その年によってこの流れ藻の多寡や漂着時期に違いがあり、これがその年の観察可能な季節来遊魚の種類を決定するようです。

伊豆では初夏になると毎年のようにさまざまな季節来遊魚が現れて、ダイバーを楽しませてくれます。毎年必ず見ることの出来る種や、まれにしか出現しないタイプなど、話題に事欠きません。

珍しくて見た目もきれいな季節来遊魚が出現すると、それを見る為だけに訪れるダイバーもいるほどです。最近では、2010年に雲見・三競に出現したイロブダイの幼魚が、レアな季節来遊魚の代表的な例でしょうか。
b0156853_9222182.jpg


[PR]
by idive-marinelife | 2001-02-06 10:47 | 用語の説明