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学名と標準和名

【学名】

学名とは、生物につけられた世界的に共通の名称のことです。
基本的にひとつの生物には、ひとつの学名しかありません。そして学名はラテン語で表記されています。

何故ラテン語が使われているかというと、死語である為に文法などの面で変化が起きないこと、ひとつの近代語の立場に偏らずに中立的でいられること、伝統的に権威のある言葉であり世界的に高い地位を有する言葉であること、学術用の語彙が整備されていることなどが理由とされています。

学名はその生物の名前を「属名」と「種小名」で表します。これは日本人の姓名の名字と名前と考えると分かりやすいですね。属名が名字に当たります。

たとえば、ヒトの学名は有名な「Homo sapiens Linnaeus, 1758」です。この場合「Homo」が属名ですね。ラテン語でホモ・サピエンスは「知恵のある人」という意味だそうです。
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また、斜字体で書かれた「Homo sapiens」の後ろの「Linnaeus, 1758」の部分は、リンネという人が1758年に命名した、ということを表しています。

学名には幾つかルールがあります。上記のように属名と種小名で構成される二名法で表すこともそうですし、ラテン語を使うこと、斜字体で表すのもそうです。また属名の最初の一文字は大文字で表し、種小名の最初の一文字は小文字で、というのもそうです。

学名を斜字体(イタリック体)で表す理由としては、文章中において、他の語句と明確に区別しておく必要がある、というのがその理由のようです。

ひとつの生物にひとつの学名、は当たり前のことのようですが、意外にそうでもありません。
もちろん混乱を避ける為、ひとつの種に対し有効な学名はひとつだけ、というのが大原則ですが、種によっては誤って複数回記載されていたり、記載後の分類の変更によって名前が変わったり、ということもままあるようです。

いずれにしろ、一種類の種に対し複数の名前があるのは混乱の元となります。誤って複数回記載されていたような場合、基本的には早い者勝ちの原則で、一番最初に提唱された学名が有効とされています。

【標準和名】

学名とは別に、日本にはその生物に対して日本語の名前(=標準和名)もあります。これは当然日本人もしくは日本語を使う人の間でしか通用しないローカルネームです。

ですが一般的にはこの標準和名のほうが広く流布しているし、親しまれていますよね。
魚のマダイの学名は「Pagrus major」ですが、日本人でマダイを「パグルス・マイヨル」と呼ぶ人はまずいないと思います。f ^ ^ *)

ところで学名はすべての生き物につけられているかと言うと、実はそうでもありません。地球上にはまだ未記載の生物がたくさんいます。

こうした、存在は知られているが未だ学名はつけられていない生き物の場合、科学的にどう表記しているのでしょうか。たとえばその生物の属まで分かっている場合は属名のあとに「sp.」という記号をつけて表します。これは「エスピー」と読むそうです。

雲見で時々見かけるウミウシのひとつにオセロウミウシがいます。しかしこのウミウシには学名がついておらず、「本州のウミウシ」図鑑では「DORIDIDAE sp.4」と紹介されています。しかしこの「sp.4」の4という数字はあくまでもこの図鑑の中の通し番号でしかありません。他の図鑑ではまた別の番号が割り振られている可能性もあります。

またオセロウミウシという名前も、正式に提唱された標準和名ではなく、あくまでもダイバーの間でのみ通用する仮称です。しかしこの通称があるが故にこのウミウシのことをきちんと認識できる、という側面は見逃せません。

このように、名前がないとその生物を記録することも出来ませんし、他の種と比べることも出来ません。
その種を他の生物ときちんと区別して認識する、という点において、学名とは違う標準和名にも、その価値は大きいものがあります。

【参考としたサイト】
「学名 - Wikipedia」
「ラテン語 - Wikipedia」
by idive-marinelife | 2001-02-21 18:47 | 用語の説明
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